花言葉は誰が決めた?公的機関の有無と歴史が生んだ驚きの真相
花束を贈るときやプレゼントを選ぶ際、多くの人が一度は意識する「花言葉」。愛や感謝を伝えるポジティブな言葉がある一方で、背筋が凍るような不吉な言葉も存在します。ふと「そもそもこの意味は一体誰が決めたのか」「何か国際的な管理組織や公式な決定機関があるのだろうか」と疑問を抱いた経験はないでしょうか。
調査を進めると、花言葉を統括する国家機関や公的組織は世界中どこにも存在しないという明確な事実に行き当たります。現行の花言葉は、18世紀のオスマン帝国で流行した秘密の暗号遊びに端を発し、19世紀フランスの貴族文化、さらには明治時代の日本における受容を経て、現代では民間企業や生花業界のマーケティングによって紡ぎ出されています。知られざる花言葉の起源と、現代における決定プロセスの真相を紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:花言葉に国家や国際連盟のような公的決定機関は一切存在せず、歴史的著作や民間団体の命名によって形成されている。
- 要点2:起源は18世紀トルコの風習「セラム」であり、駐英大使夫人の書簡とフランス女性作家の出版物が世界へ爆発的に広めた。
- 要点3:新種の花言葉は種苗メーカーや生花関連団体が販売促進を兼ねて決定しており、文化や宗教観の違いで日欧の意味に大きな乖離がある。
【歴史の原点】トルコの暗号遊戯「セラム」と貴族女性たちが広めた知られざる起源
花言葉のルーツを歴史の糸をたどって遡ると、18世紀初頭のオスマン帝国(現在のトルコ・イスタンブール)に到達します。当時、宮廷や富裕層の間で「セラム(sélam)」と呼ばれる風習が流行していました。これは、小箱に花や果物、羽毛、小石などを忍ばせ、品物の名前と韻を踏む詩句(ライム)を重ね合わせることで、言葉を発することなく感情や密かなメッセージを伝える知的遊戯でした。厳格な身分制度やイスラム社会の戒律の下、表立って愛を語れない貴族階級の密かなコミュニケーションツールとして発展した背景があります。
この異国情緒あふれる文化を西欧社会へ持ち込んだキーパーソンが、英国の駐トルコ大使夫人であったメアリー・モンタギュー(Lady Mary Wortley Montagu)です。彼女は1717年から1718年にかけてイスタンブールに滞在した際、現地女性たちのセラム文化に強い感銘を受けました。本国へ送った手紙の中で「トルコでは花や贈り物を組み合わせることで、インクや紙を一切使わずに争いも愛の告白も手紙として交わすことができる」と熱狂的に報告したのです。のちに刊行された『トルコ書簡集』はヨーロッパの知識階級に衝撃を与え、花に想いを託す概念が急速に普及していきました。
しかし、当時のセラムは韻を踏む言葉遊びであり、特定の花に特定の意味が1対1で固定されていたわけではありませんでした。それを現在のような「体系化された花言葉辞典」へと昇華させたのが、フランスの女性貴族シャルロット・ド・ラトゥール(Madame Charlotte de Latour、本名ルイーズ・コルタベール)です。
1819年、彼女は世界初となる本格的な花言葉解説書『花言葉(Le Langage des Fleurs)』をパリで出版しました。四季の巡りに合わせて植物を分類し、ギリシャ神話やキリスト教の伝承、民俗信仰を織り交ぜながら各植物に象徴的なメッセージを定義した本書は、瞬く間に大ベストセラーを記録。19世紀のヴィクトリア朝英国やヨーロッパ全土へ波及し、貴族や市民階級の必須教養として「花の象徴体系」が定着する決定打となりました。

花言葉の公式機関は存在しない?決め方の真相と「現代の仕掛け人」
現在でも「国際花言葉協会のような公的組織があるのでは」と誤解されるケースが後を絶ちません。ですが、植物の学名を管理する「国際植物命名規約(ICN)」のような厳密な公的決定機関は花言葉の世界に存在しないのが実態です。法的な根拠もなければ、絶対的な統一ルールも存在しません。
では、現代において新しく生まれる花や品種の花言葉は一体誰が決めているのでしょうか。その主たる担い手は、品種改良を手掛ける種苗メーカー、生花流通の業界団体、そして生花店です。
日本国内では、一般社団法人日本花普及センターや、全国8,000店舗以上の加盟網を持つJFTD(花キューピット)などの生花業界組織が、消費拡大キャンペーンや季節行事に合わせて花言葉を提案・普及させています。また、サントリーフラワーズやサカタのタネといった大手種苗企業が、青いバラ「アプローズ(花言葉:夢 かなう)」や青いカーネーション「ムーンダスト(花言葉:永遠の幸福)」のように、新品種の市場投入に合わせて独自の花言葉を命名・登録商標化する戦略が一般的です。
新種の花言葉が決まるプロセスは、概ね以下の3つの経路に分類されます。
- 開発企業のブランディング:開発にかけた歳月や品種の特性(色合い、耐久性、香り)を反映させ、宣伝プロモーションの一環として決定。
- 業界団体の公募企画:母の日、父の日、いい夫婦の日などのギフト需要を喚起するため、一般消費者や愛好家から言葉を募集・選定。
- 著者・フラワーデザイナーの独自解釈:出版物やメディア露出において、花姿の印象や季節感から新解釈を付与し、それがネット上で拡散して定着。
つまり現代の花言葉は、アカデミックな審議会によって制定されるものではなく、「人々の共感と商業的プロモーションの相互作用」によって生み出され、支持されたものが慣習として生き残っていく仕組みになっています。
【徹底比較】なぜ同じ花で意味が違うのか?西洋の神話と日本の文化的変遷
日本に西洋の花言葉文化が持ち込まれたのは、文明開化に沸く明治時代初期(1870〜1880年代)でした。欧米の植物学の導入とともに英語教材や翻訳書を通じて伝来し、1910年(明治43年)頃には女学生を中心に花言葉ブームが巻き起こります。
ここで興味深い現象が起きました。西洋の花言葉がそのまま直訳されたものもあれば、日本古来の花鳥風月や和歌、語呂合わせ、あるいは武士道精神に根ざした独自の解釈へと大胆に書き換えられた花が数多く存在する点です。文化や宗教観の違いが、東西における花言葉の決定的なギャップを生み出しました。
| 花の名前 | 西洋における意味と発祥背景 | 日本における主な意味 | 決定背景・編集部の分析 |
|---|---|---|---|
| 白百合(ユリ) | 「純潔」「処女性」 (聖母マリアを象徴する宗教的文脈) | 「威厳」「高貴」「無垢」 | キリスト教絵画の「受胎告知」に描かれる百合の象徴がそのまま輸入されつつ、大輪の花姿から威厳のニュアンスが付加。 |
| 黄色のバラ | 「嫉妬」「不貞」「友情の薄れ」 (イスカリオテのユダの衣の色) | 「友情」「献身」「温もり」 (父の日のギフト定着) | 黄色を裏切りの色とする中世欧州の禁忌が、日本では「父の日=黄色いリボン運動」の商業キャンペーンで前向きに上書きされた典型。 |
| 桜(サクラ) | 「優れた教育」「私を忘れないで」 (ジョージ・ワシントンの斧の逸話) | 「精神の美」「優美な女性」 | 欧米では米国初代大統領の逸話に引きずられたのに対し、日本では国花としての散り際の潔さや内面の美学が反映。 |
| 朝顔(アサガオ) | 「儚い恋」「虚飾」 (半日で萎む生態から) | 「愛情」「結束」「明日も爽やかに」 | 西洋では早朝に咲いて昼に萎む儚さがマイナス視されたが、日本では支柱に固く巻き付くツルの習性から「固い絆」へ転換。 |
表から明らかなように、花言葉は固定不変の真理ではなく、受け入れる側の社会心理や文化装置によって意味が意図的に再構成される可変的なテキストであることが分かります。

【実態検証】愛の告白が呪いに?「怖い花言葉」が生まれた神話と毒の背景
ネット検索や知恵袋で定期的に炎上するトピックが「プレゼントしたら相手から絶縁されかけた」「裏の花言葉が不気味すぎる」というトラブルです。祝福の花束に紛れ込むダークな意味は、どのような経路で生まれたのでしょうか。
怖い花言葉が誕生した背景には、明確に「ギリシャ神話の悲劇的結末」と「植物が持つ薬理的毒性」という2つの客観的理由が存在します。
代表格が紫のアネモネ(花言葉:消える希望、見捨てられた)や、紫のヒアシンス(花言葉:哀哀、悲痛)です。ギリシャ神話において、美少年アドニスが野猪に突かれて命を落とした際の血から咲いたのがアネモネであり、太陽神アポロンの愛を受けた少年ヒュアキントスが西風の神の嫉妬によって円盤に打たれて死んだ血から咲いたのがヒアシンスです。古代ギリシャ人にとって、これらの花は悲惨な死と未練のメモリアルでした。シャルロット・ド・ラトゥールら19世紀の編纂者たちは、この古典文学の教養をそのまま花言葉として定義したため、現代の感覚からすると不穏な意味が残存することになりました。
もう一つの要因が植物の毒性です。ドクニンジン(花言葉:死も惜しまず)やトリカブト(花言葉:復讐、人間嫌い)のように、人を死に至らしめる猛毒を持つ植物には、古来の薬草学者や民衆の畏怖がダイレクトに投影されています。外見が可憐であっても、致死性のアルカロイドを含む花には自然と警戒の意味が付与されたのです。
生花店の実務現場からは、こうしたネガティブな花言葉について切実な声が聞かれます。東京都内の老舗生花店店主は次のように明かします。
「店頭で黄色いチューリップ(望みのない恋)やマリーゴールド(絶望・嫉妬)を可愛いからと選ばれるお客様には、念のため用途を確認します。相手がネットで花言葉を深読みする方だと、良かれと思った贈り物が思わぬ誤解を招くリスクがあるためです。ただ、私たちが仕入れ時に使う業界基準のカタログには、ポジティブな意味しか載っていないことも多く、ネット上でネガティブな意味ばかりが独り歩きしている側面も否めません」
一般に知られていない盲点とネットの誤解|「花言葉は誰でも作れる」は本当か
「公式な決定機関がないなら、自分が思いつきで花言葉を作ってもいいのか?」という疑問に対して、法的な観点から答えれば「完全に自由であり、誰でも作れる」というのが事実です。著作権法上、短い単語の組み合わせである花言葉それ自体に著作権は認められにくく、命名すること自体を取り締まる法律はありません。
しかし、「誰でも作れる」ことと「社会に花言葉として定着する」ことの間には、越えがたい巨大な壁が存在します。
ネット上には個人ブログやアフィリエイトサイト、インフルエンサーの創作した「自称・花言葉」が無数に氾濫しています。それらが定着せず淘汰される一方で、生き残る花言葉には明確な条件があります。それは「大手メディアの採用」「ブライダルや花き業界の流通に乗ること」「植物の視覚的特徴や文化的文脈との整合性」です。
一例として、近年定着したサントリーの「青いバラ」は、かつてバイオテクノロジーの限界から「不可能・存在しないもの」の代名詞(花言葉:不可能)とされていました。しかし同社が遺伝子組換え技術によって世界で初めて青色色素を持つバラの開発に成功した際、正式に「夢 かなう」という新しい花言葉を提唱しました。開発の歴史、科学的偉業、そして大々的なプレスリリースと生花流通が一体となったことで、旧来の「不可能」という否定的な言葉が見事に書き換えられたのです。
個人の勝手な思いつきが花言葉になることは極めて稀であり、背後に開発ストーリーや流通インフラという強力なバックボーンが存在して初めて、社会的な共通言語としての命が吹き込まれます。

【プロの結論】コミュニケーション社会学から読み解く「花言葉の正しい活用法」
花言葉をめぐる歴史と実態を俯瞰したとき、浮かび上がるのは「人間はいつの時代も、直接言葉にできない想いを仮託するメディア(媒体)を求めてきた」というコミュニケーションの力学です。18世紀トルコの後宮で戒律をくぐり抜けるために使われた暗号は、現代では面と向かって言えない好意や感謝を伝えるクッションとして機能しています。
しかし、花言葉に過度な絶対性を求めることは人間関係においてリスクを伴います。心理学における「心理的バウンダリー(自他境界)」の観点から言えば、相手が自分と同じ知識体系や文脈を共有していると思い込むことは、コミュニケーションの摩擦を生む原因になり得ます。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
花言葉をギフトや表現として取り入れる際は、以下の基準で自分と相手の関係性を測ることが賢明です。
▼花言葉の活用が向いている人・場面:
- メッセージカードを添えられる人:「この花には『感謝』の意味があるから選んだ」と自分の言葉で文脈を明示できる場合、花言葉は強力なエモーショナルツールになります。
- ストーリーを共有できる間柄:青いバラの「夢 かなう」を受験生や新規事業の立ち上げ祝いに贈るなど、相手の境遇と花の背景が一致しているシーン。
- 記念日やプロポーズ:赤いバラ(あなたを愛してます)など、社会的合意が確立している定番の花を王道のシチュエーションで用いる場合。
▼花言葉の活用に慎重になるべき人・場面:
- ビジネスや公の場での贈り物:相手やその関係者が「黄色の花=不吉」「白ユリ=葬儀の連想」など異なる文脈で捉える可能性がある場合、奇抜な花言葉に頼るのは避けるべきです。
- ネットの情報を鵜呑みにして相手を試す人:「裏の意味に気づいてくれるか」といった受動攻撃的な意図(察してほしい願望)で花言葉を利用することは、関係の破綻を招きます。
- 相手が植物の知識に深くない場合:説明なしにマイナーな花言葉を期待しても、ただの花束として消費され、独りよがりな自己満足に終わるリスクが高まります。
花言葉は客観的な法規ではなく、想いを届けるための「演出」に過ぎません。主役は花言葉辞典の記述ではなく、花を手渡すあなた自身の誠実な言葉です。
【花言葉は誰が決めたのか】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:自分が新しい花言葉を作って世の中に広めることは可能ですか?
A1:法的な制限はないため誰でも自由に作れます。ただし、社会に定着させるには生花業界の流通に乗せるか、メディアやSNSで爆発的な共感を得て書籍等に採録される必要があります。個人の思いつきがそのまま一般的な花言葉として認められるケースは極めて稀です。
Q2:同じ花なのに色や本数によって意味が正反対になるのはなぜですか?
A2:主に19世紀ヨーロッパの書籍文化において、花束の組み合わせや色彩心理を細分化して楽しむ読者層のニーズに応えた結果です。例えばバラの場合、情熱の「赤」は愛を、太陽の「黄」は中世の偏見から裏切りを、本数では「1本=一目惚れ」「999本=何度生まれ変わっても愛する」といった具合に、贈答文化の洗練とともに商業的にプロデュースされていきました。
Q3:プレゼントしたい花に怖い花言葉がある場合は避けるべきですか?
A3:過度に気にする必要はありませんが、メッセージカードで「なぜその花を選んだのか(色が好き、似合うと思ったなど)」を明確に伝える配慮が推奨されます。相手がネットで花言葉を検索して不要な誤解を抱くのを防ぐため、ポジティブな意図を言葉として添えるのが大人のマナーです。
まとめ:変遷を続ける花のメッセージとこれからの付き合い方
花言葉は誰が決めたのか――その問いの結論は、「公式な決定機関は存在せず、オスマン帝国の暗号遊びから始まり、欧米の文学者、そして現代の種苗企業や生花店が時代に合わせて編纂し続けてきた文化の集積である」といえます。
花言葉は過去の遺物ではなく、現在進行形で更新されている生きたカルチャーです。科学技術によって新しい色彩の花が生まれるたび、新たな希望や願いがそこに吹き込まれています。絶対的なルールに縛られることなく、大切な人との対話を豊かに彩るエッセンスとして、軽やかに楽しむ姿勢こそが最も美しい付き合い方といえるでしょう。 (出典: 花 言葉 誰が 決め た(Yahoo!ニュース))