近江兄弟社メンタームの真相!メンソレータムとの違いと驚愕の歴史
ドラッグストアの衛生用品コーナーに足を運ぶと、必ずと言っていいほど隣り合って並んでいる緑色の缶やリップスティック。片面には愛らしいナースの少女、もう片面には神々しい太陽神の横顔が描かれています。滋賀県近江八幡市に本社を構える近江兄弟社の「メンターム」と、ロート製薬が展開する「メンソレータム」。見た目も使用感も酷似しているこの2つの製品について、「どちらが本物で、何が違うのか」と疑問を抱いた経験を持つ人は少なくありません。
ネット上では時に「メンタームはメンソレータムの安価なコピー商品ではないか」といった根拠のない誤解が散見されますが、その歴史の深層には、昭和のビジネス界を揺るがした壮絶な倒産劇と、一人のアメリカ人建築家が遺した不屈のヒューマニズムが存在します。両者の決定的な成分差から誕生の裏側にある感動的な企業再生ドラマ、そして今選ぶべき製品の基準まで、取材現場の視点から徹底的に紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「メンターム」を作っている近江兄弟社こそが、かつて日本で「メンソレータム」を普及させた元祖であり、模倣品ではない。
- 要点2:1974年の経営破綻によって商標を失った近江兄弟社が、残された設備と技術、社員の執念で再起した製品が「メンターム」である。
- 要点3:軟膏の主成分はほぼ共通するが、メンタームには「サリチル酸メチル」が加わるなど処方に違いがあり、使用感やコストパフォーマンスで賢く使い分けるのが正解。
【誕生の真相】ヴォーリズの信念と近江兄弟社・ロート製薬の歴史的経緯
この2つのブランドを取り巻く物語は、1905(明治38)年に滋賀県立商業学校の英語教師として来日したアメリカ人青年、ウィリアム・メレル・ヴォーリズの足跡から始まります。建築家としても名高いヴォーリズは、キリスト教伝道と地方創生を志し、1920年に滋賀県近江八幡市で「近江セールズ株式会社(後の近江兄弟社)」を創立しました。
当時、日本には家庭用の手軽な万能外用薬が不足していました。そこでヴォーリズは、米国のメンソレータム社創業者アルバート・アレクサンダー・ハイドと意気投合し、日本国内における独占販売権および製造権を獲得します。「近江兄弟社メンソレータム」として発売された緑の缶は、家庭の常備薬としてまたたく間に全国の家庭へと普及していきました。同社が得た収益は、ヴォーリズ学園の教育事業や近江療養院(現・ヴォーリズ記念病院)の設立など、惜しみなく地域社会の福祉へと還元されたのです。
しかし、高度経済成長期の終焉とともに暗転が訪れます。多角化した事業の不振やオイルショックの煽りを受け、1974年(昭和49年)12月、株式会社近江兄弟社は負債総額約70億円を抱えて会社更生法の適用を申請し、事実上の倒産に追い込まれました。このとき、再建資金の調達と債務整理の過程で、虎の子であった「メンソレータム」の商標権と製造販売権を米国の親元へ返還せざるを得なくなります。
その権利を翌1975年に買い取ったのが、家庭薬の販売網強化を狙っていた大阪のロート製薬でした(ロート製薬は1988年に米メンソレータム社を完全買収)。ナースマークとともに「メンソレータム」はロート製薬の主力商品へと移行します。
一方で、近江八幡の工場と職を失いかけた近江兄弟社の従業員たちは諦めませんでした。支援に名乗りを上げた大鵬薬品工業などの協力を受け、「長年培った製造技術と配合ノウハウは自社のものだ」と立ち上がります。メンソレータムの「メン」に、創業の理念である「チーム(TEAM)」を掛け合わせ、1975年に生み出された自社ブランドこそが「近江兄弟社メンターム」でした。つまり、近江兄弟社は後発の模倣者ではなく、日本におけるメンソレータムの文化そのものを築き上げた「生みの親」というべき存在なのです。

【完全比較】メンタームとメンソレータムは何が違う?成分と効能の決定的な差
「パッケージも名前も似ているが、中身はどう違うのか」という疑問は、ドラッグストアの店頭でも頻繁に聞かれます。結論から言えば、軟膏・リップともに主要な有効成分の方向性は共通しているものの、添加物や基剤の処方設計に明確な個性が存在します。
最も大きな違いが現れているのが、伝統的な「薬用軟膏」です。ロート製薬の「メンソレータム軟膏c」がdl-カンフル、l-メントール、ユーカリ油というシンプルな有効成分構成を黄色ワセリン主体で包み込んでいるのに対し、近江兄弟社の「近江兄弟社メンターム」には、これらに加えて鎮痛・抗炎症作用を持つ「サリチル酸メチル」が有効成分として配合されています。また、基剤には酸化チタンや精製ラノリンが含まれており、軟膏の色味もメンソレータムが黄色がかった半透明であるのに対し、メンタームはやや白濁したマットな質感を持っています。
| 項目 | 近江兄弟社 メンターム(薬用軟膏) | ロート製薬 メンソレータム(軟膏c) | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 医薬品区分 | 第3類医薬品 | 第3類医薬品 | どちらも手軽に購入できる一般用医薬品 |
| 主な有効成分 | dl-カンフル、l-メントール、ユーカリ油、サリチル酸メチル | dl-カンフル、l-メントール、ユーカリ油 | メンタームはサリチル酸メチルによる鎮痛サポートが加わる |
| 基剤・添加物 | 白色ワセリン、黄色ワセリン、パラフィン、精製ラノリン、酸化チタン | 黄色ワセリン、白色ワセリン、パラフィン | メンソレータムは純粋な油膜感、メンタームは少し密着性が高い |
| 質感・色味 | 白濁したやや固めのペースト、スッとした切れ味 | 淡黄色の透明感あるペースト、伸びが良い | 肌に留まる感覚を好むならメンターム、広範囲ならメンソレータム |
| 効能・効果 | すり傷、火傷、しもやけ、虫さされ、そり傷、切り傷、打撲傷、皮膚炎症、かゆみ | ひび、あかぎれ、しもやけ、かゆみ | 承認上の効能表記はメンタームの方が多岐にわたる |
| 実勢価格帯(85g缶) | 約500円〜700円前後 | 約700円〜950円前後 | メンタームの圧倒的なコストパフォーマンスが際立つ |
リップスティック(医薬部外品)においても同様の傾向が見られます。近江兄弟社メンターム薬用スティックは、ドラッグストアで1本100円前後、2本パックでも200円台前半で見かけることが多く、スティック自体がやや硬めで溶けにくく、唇の上で薄く均一に密着するのが特徴です。対してメンソレータム薬用リップは、体温でややとろけるような滑らかな塗り心地を提供します。日常的なヘビーユースやポケット常備には、コスパに優れたメンタームが絶大な支持を集めています。
【シンボルマークの秘密】リトルナースとアポロマークに込められた不屈の精神
両者のパッケージを決定づけているのが、中央に堂々と配置されたシンボルキャラクターです。ロート製薬のメンソレータムに描かれているのは、清楚な看護師の少女「リトルナース」。これはもともと1951年に日本の著名な商業デザイナー・今竹七郎氏が米メンソレータム社のためにデザインしたもので、家庭の救護天使を象徴しています。
1975年の会社再建時、近江兄弟社はこの愛されたリトルナースの商標も手放さなければなりませんでした。絶望的な状況下で社員たちが新たに創り上げたのが、太陽神をかたどった「アポロマーク」です。
ギリシャ神話に登場するアポロンは、音楽や詩だけでなく、「光明」と「医術」を司る神として知られています。自社存続の危機という暗闇に直面した近江兄弟社が、「再び太陽のように昇り、人々の健康と社会を照らし出す存在になる」という悲壮なまでの決意を託してデザインされたのが、この横顔のレリーフでした。当時の関係者の証言や社史を紐解くと、アポロマークの少年のような横顔には、創業者ヴォーリズの少年時代の純真さと、再生を誓った若手社員たちの横顔が重ね合わされていたと伝えられています。

【実態検証】利用者の生の声とネットの評判・口コミから見えたリアル
長年にわたり繰り広げられてきた「メンターム派 vs メンソレータム派」の議論。SNSや大手コスメ口コミサイト、知恵袋などのコミュニティを分析すると、現代のユーザーが下している評価には明確なロジックが存在することが分かります。
メンターム愛用者のリアルな声(肯定派の意見)
「冬場の手荒れやかかとのひび割れには、昔からメンターム一筋。サリチル酸メチルが入っているせいか、塗った瞬間のスッとする清涼感と鎮静感がメンソレータムより力強い気がする」(40代・製造業男性)
「リップを毎日のように塗り直すので、近江兄弟社の薬用スティックは神アイテム。夏場でもポケットの中でドロドロに溶けない硬さが気に入っている。何より近所の薬局で安売りされていて財布に優しすぎる」(20代・大学生女性)
「ヴォーリズの歴史を知ってから、近江兄弟社を応援したくてあえてメンタームを指名買いしている。地方の誇りを感じるブランド」(50代・教員男性)
慎重派・メンソレータム支持者の声
「メンタームは軟膏の香りが少し湿布薬っぽく感じることがある。メンソレータムの方がマイルドなハーブ感で使い慣れている」(30代・主婦)
「リップのパッケージデザインはリトルナースの方が可愛くて好き。持ち歩くポーチの中身としてテンションが上がるのはメンソレータム」(20代・会社員女性)
価格重視派や実用性重視の層、そして硬めのテクスチャーを好む職人層やアウトドア愛好家からはメンタームへの熱烈な支持が寄せられています。特に「塗った後にベタつきが残りにくい」という基剤の設計が、作業前後の手指ケアにおいて高く評価されています。
一般に知られていない盲点とネットの誤解|「パクリ」という最大の誤謬
インターネットの掲示板やSNSでは、今なお「メンタームは後発のジェネリックやコピー商品」という誤解が定期的に浮上します。しかし、ここまでに詳述した通り、製造工場や職人の系譜という観点において、歴史が連続しているのはむしろ近江兄弟社の方です。
滋賀県近江八幡市にある近江兄弟社の旧本社敷地周辺には、現在もヴォーリズが設計した数々の近代建築(登録有形文化財)が立ち並び、市民に親しまれています。近江八幡の工場で作られていた軟膏が、かつて「メンソレータム」と呼ばれ、現在は「メンターム」と名を変えて同じ土地で作り続けられているという事実は、日本の産業史における稀有なレジリエンス(再起力)の象徴です。
また、もうひとつの盲点は「どちらが優れているか」という二元論に囚われすぎることです。ロート製薬が引き継いだメンソレータムは、卓越したマーケティングと研究開発力によって多様な派生商品(リップフォンデュやメディカルリップなど)を生み出し、スキンケアブランドとしての地位を確立しました。一方で近江兄弟社は、日焼け止め「サンベアーズ」シリーズや高保湿スキンクリームなど、高品質でありながら日常使いを徹底的に支える庶民派の優良製品を次々と送り出しています。対立軸ではなく、互いに切磋琢磨した結果として日本のスキンケア水準が底上げされたと捉えるのが、フェアな視点です。

【プロの結論】どっちを選ぶべき?失敗しない判断基準と企業の教訓
店頭で緑の缶やスティックを前にした際、迷わず自分に最適な方を選ぶための客観的判断基準を提示します。
近江兄弟社メンタームを選ぶべき人
- 圧倒的なコストパフォーマンスを最優先したい人:軟膏・リップともに実勢価格が抑えられており、家計への負担が極めて少ない。
- さっぱりした使用感と強い爽快感を求める人:サリチル酸メチルのすっきりとした清涼感と、油膜感が肌に長引きにくい処方を好む人に適しています。
- 固めのリップが好みな人:ポケットや車内に置いておいても溶け崩れにくく、薄付きで男性にも扱いやすい。
- 製品のバックボーンや物語に惹かれる人:ヴォーリズの精神や、倒産から立ち上がった近江八幡の職人魂を応援したい人。
ロート製薬メンソレータムを選ぶべき人
- しっとりとした濃厚な油膜で肌を守りたい人:黄色ワセリン主体の伝統的な保護膜で、ひびやあかぎれをじっくり包み込みたい人に最適。
- やわらかくなめらかな塗り心地を好む人:体温でスッと伸びるテクスチャーや、マイルドなミント香を重視する人。
- リトルナースのデザインやブランドの安心感に親しみがある人:幼少期からの慣れ親しんだアイコンに愛着がある人。
ビジネスの構造改革や個人のキャリア論という視点からも、近江兄弟社の歴史は重厚な教訓を与えてくれます。外部環境の激変によって看板(商標)を失ったとしても、培った技術力、現場の団結、そして地域社会との信頼関係という「目に見えない無形資産」さえ残っていれば、看板を変えて何度でも立ち上がることができる。メンタームの緑の缶は、逆境に抗うすべての働く人々に対する力強いエールそのものです。
【近江兄弟社メンターム】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:メンターム軟膏は顔やニキビに塗っても大丈夫ですか?
A1:メンタームには殺菌作用や抗炎症作用があるため、軽度のニキビや吹き出物、ひげそり後の肌荒れに使用することは効能上認められています。ただし、メントールやカンフル、サリチル酸メチルによる刺激があるため、目や目の周囲、粘膜への使用は厳禁です。顔全体に広く塗るのではなく、患部にピンポイントで少量塗布してください。
Q2:メンタームとメンソレータム、どちらが歴史が古いのですか?
A2:ブランドの誕生としては、米国のメンソレータム(1894年創薬)が先行します。ただし、日本国内で最初に製造・普及させたのは1920年創業の近江兄弟社です。1975年に商標権がロート製薬へ移り、近江兄弟社が同年「メンターム」を発売したため、「国内製造の連続性」で見れば近江兄弟社、「ブランド名の歴史」で見ればメンソレータムが古いという関係になります。
Q3:リップスティックのメンタームとメンソレータムで、成分に決定的な違いはありますか?
A3:どちらも有効成分として「l-メントール」と「dl-カンフル」を配合しており、唇の荒れやひび割れを防ぐ基本効果は同等です。違いは基剤と添加物にあり、メンターム薬用スティックはセレシンやパラフィンを用いて硬めに仕上げられており、メンソレータムは精製マカデミアナッツ油などを配合してなめらかな伸びを重視しています。
Q4:滋賀県近江八幡市にある近江兄弟社の本社は見学できますか?
A4:滋賀県近江八幡市市井町にある近江兄弟社本社敷地内には「メンターム資料館」が併設されており、歴代の製品パッケージや看板、ヴォーリズに関する貴重な史料が一般公開されています(開館日や時間は事前に公式ウェブサイト等でご確認ください)。また、周辺のヴォーリズ建築群を巡る観光ルートも非常に人気があります。
まとめ:緑の缶が語り継ぐ不屈の物語と賢い選び方
緑のパッケージに包まれた軟膏とリップ。近江兄弟社メンタームとロート製薬メンソレータムは、一見すると見分けがつかない双子のような存在に見えます。しかしその実態は、日本のスキンケア文化を切り拓いた先駆者の誇りと、それを引き継ぎ発展させた大手製薬企業の情熱が交差する、唯一無二のドラマを秘めた2大ブランドです。
サリチル酸メチル配合ですっきり密着し、抜群のコストパフォーマンスを誇る「メンターム」。濃厚なワセリンのヴェールで優しく保護し、洗練されたラインナップを展開する「メンソレータム」。歴史的経緯と処方の違いを正しく理解した上で、自身の肌質や使用シーン、そしてブランドが持つフィロソフィーに合わせて選ぶことこそが、最も賢いスキンケアの第一歩となります。 (出典: 近江 兄弟 社 メンターム(Yahoo!ニュース))