相続関係説明図の書き方完全ガイド!法務局提出と原本還付の要点
2024年4月に不動産の相続登記が義務化されて以降、正当な理由なく放置すると過料が科される法改正が定着しました。これに伴い、不動産や預貯金の承継手続きを司法書士に丸投げせず、自力で法務局へ申請しようと試みる方が急速に増えています。しかし、多くの人が最初の大きな壁として直面するのが「相続関係説明図」の作成です。
戸籍謄本を何通も集めたものの、誰をどのように図枠線で結べばよいのか、どのような肩書や日付を記載すれば法務局で不備なく受理されるのかは直感的には分かりにくいものです。さらに、高額になりがちな戸籍一式の原本を法務局から手元に取り戻す「戸籍謄本の原本還付手続き」を成立させるためには、所定のルールに従った説明図の添付が不可欠となります。本記事では、自力作成を目指す方に向けて、法務局の最新基準に準拠した記載例や複雑なケースの対処法、プロに依頼すべき境界線までを徹底的に解明します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:相続関係説明図を登記申請書に添付することで、収集に数千円〜数万円かかった戸籍謄本等の原本をすべて手元に還付(返却)させられる。
- 要点2:被相続人の「最後の本籍・最後の住所・死亡日」および相続人全員の「現住所・生年月日・続柄・取得区分(相続・分割など)」を正確に書くのが鉄則。
- 要点3:代襲相続や数次相続が絡む複雑な家系では自力作成のエラー率が跳ね上がるため、エクセルテンプレートの活用と専門家依頼の損益分岐見極めが鍵となる。
【2026年最新】相続関係説明図とは?法定相続情報一覧図との決定的な違い
相続関係説明図とは、亡くなった方(被相続人)と遺産を引き継ぐ権利を持つ人(相続人)の血縁・婚姻関係を一覧の家系図形式で可視化した書類です。主に法務局での相続登記(不動産の名義変更)を行う際、添付書類として作成されます。
実務上、この書類を作成する最大の動機は「戸籍謄本等の原本還付(手元への返還)を受けること」にあります。本来、法務局に提出した公的証明書はそのまま回収されてしまいますが、適切な相続関係説明図を添えて申請することで、束になった戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の原本が登記完了後にそのまま返還されます。これにより、その後に控える銀行預金の解約や証券口座の移管手続きに同じ戸籍原本を使い回すことが可能になり、戸籍の再取得にかかる莫大な発行手数料(1通450円〜750円)と役所巡りの手間を大幅に削減できます。
一方で、よく混同される制度に「法定相続情報一覧図」があります。両者は似て非なる性質を持っており、手続きの全体像に応じて適切に使い分ける必要があります。
| 比較項目 | 相続関係説明図 | 法定相続情報一覧図 | 編集部の見解・実務上の推奨 |
|---|---|---|---|
| 主たる目的 | 不動産登記申請時の戸籍謄本原本還付 | 各種相続手続き(銀行・証券・税務)のワンストップ簡素化 | 不動産登記のみなら相続関係説明図で十分。口座が多いなら一覧図が有利。 |
| 法務局の認証印 | なし(申請人が作成した私文書) | あり(法務局登記官の認証文が付与) | 一覧図は公的証明力を持ち、金融機関へ戸籍束を出さずに済む強みがある。 |
| 遺産分割の結果記載 | 記載する(「相続」「遺産分割」「放棄」等) | 記載不可(血縁・戸籍上の関係のみを記載) | 説明図は「誰が不動産を取得したか」の結論まで1枚で示す点が実務的特徴。 |
| 作成・手続きの難度 | 登記申請書と一緒に提出するだけで完結 | 事前の申出手続きと法務局での審査が必要 | 登記申請を急ぎたい場合は、別途の申出手間がない説明図が圧倒的に早い。 |

法務局が求める相続関係説明図の書き方|基本ルールと記載例
法務局に提出する書類である以上、自己流の略記は許されず、戸籍謄本および住民票の記載と1文字の狂いもなく合致させる必要があります。実務で求められる基本レイアウトと必須記載事項を整理しました。
1. タイトルと被相続人(亡くなった方)の記載ルール
用紙の最上部中央に「被相続人 〇〇〇〇 相続関係説明図」と大きく記載します。用紙サイズは原則としてA4横向き(縦書き・横書きどちらでも可、現在は横書きが主流)を用います。
被相続人の欄には、以下の4項目を漏れなく記述します。
- 氏名:戸籍に記載された通りの正式な漢字(旧字体も正確に反映)
- 最後の本籍:戸籍謄本の「本籍」を番地まで完全に記載(住民票の住所と混同しないこと)
- 最後の住所:住民票の除票または戸籍の附票に記載された「最後の住所」
- 生年月日・死亡年月日:「昭和〇年〇月〇日生」「令和〇年〇月〇日死亡」と元号表記で記載
2. 相続人の記載ルールと続柄の結び方
被相続人から見て配偶者は二重線、子どもは一本の実線で結びます。各相続人の枠内には以下の情報を明記します。
- 氏名:現在の戸籍上の氏名
- 生年月日:元号表記
- 現在の住所:住民票に記載された住所(都道府県名からアパートの部屋番号まで正確に)
- 続柄:「夫」「妻」「長男」「長女」など
- 権利の帰属記号(最重要):不動産を実際に取得する人には「(相続)」、遺産分割協議で取得しないことになった人には「(遺産分割)」、家庭裁判所で相続放棄を受理された人には「(相続放棄)」と名前の右横または下部に明記します。
3. 手書き見本と無料エクセルテンプレートの選び方
相続関係説明図はパソコン作成が一般的ですが、「黒のボールペンによる丁寧な手書き作成」でも法務局は問題なく受理します。修正液の使用は原則認められないため、手書きの場合は下書きをしっかり行う必要があります。
パソコンで作成する場合、法務局の公式サイトが提供している登記申請様式コーナーから、あるいは各種士業事務所が配布している「相続関係説明図 テンプレート 無料(Excel形式)」をダウンロードするのが最も確実です。エクセルの図形機能やセル枠線を利用すれば、文字のズレを防ぎながら短時間で美しい図面を仕上げられます。
【ケース別】代襲相続・数次相続でミスが多発する落とし穴
親族関係が一段階複雑になると、記載ミスによる法務局からの補正(修正・再提出)命令が急増します。特に相談件数の多い2大パターンについて、正しい図解テクニックを解説します。
代襲相続(子どもが先に亡くなっており孫が相続人になる場合)
被相続人よりも前に子どもが死亡している場合、その子ども(被代襲者)の権利を孫(代襲相続人)が引き継ぎます。この場合、説明図上では被代襲者の枠内に「令和〇年〇月〇日死亡(被相続人より前に死亡した旨が分かる日付)」を明記し、その下に線を伸ばして孫の情報を繋ぎます。
よくある誤りは、先に亡くなった子どもを家系図から省略してしまい、被相続人と孫を直接親子のように繋いでしまうケースです。これは戸籍謄本との整合性が取れず、即座に差し戻し対象となります。
数次相続(遺産分割協議を行わないまま次の相続人が亡くなった場合)
例えば「父が死亡した後、遺産分割協議をしないうちに母も死亡した」というようなケースを数次相続と呼びます。この場合、1枚の図面の中で「第1次相続」と「第2次相続」の両方の関係性を分離して明記する必要があります。
母の枠には「被相続人 兼 〇〇(父)の相続人」といった形で二重の立場を記載し、父の遺産分割協議書において母の承継分を誰が引き継ぐのかを明確に連動させなければなりません。当事者の権利関係が何重にも交錯するため、記載方法の難易度は極めて高くなります。

【実態検証】戸籍謄本の原本還付手続きで失敗する現場のリアル
法務局の窓口や法務相談の現場では、「相続関係説明図を出したのに戸籍が返却されなかった」「図面の記載と添付書類の記載が食い違って補正になった」というトラブルが後を絶ちません。現場で頻発している代表的な落とし穴を検証します。
落とし穴1:「原本還付」の請求意思を図面に書いていない
登記実務において、戸籍謄本等の原本還付を受けるためには、相続関係説明図の末尾(余白部分)に決まり文句を記載しておく必要があります。具体的には、図面の右下等に「上記のとおり相違ありません。令和〇年〇月〇日 申請人 〇〇〇〇(認印)」と署名押印し、「登記申請書に添付した戸籍謄本等の原本は還付した」旨のチェックを登記官に委ねる意思表示が必須です。これを怠ると、通常の提出書類とみなされて原本が保管庫へ送られてしまう恐れがあります。
落とし穴2:遺産分割協議書・印鑑証明書の住所表記との不一致
不動産登記手続きでは、遺産分割協議書の必要書類として全員分の印鑑証明書と住民票を提出します。この際、相続関係説明図に記載した住所が「1丁目2番3号」となっているのに対し、住民票が「一丁目2番地3」となっているような些細な表記揺れであっても、厳格な法務局では補正対象になります。「すべての公的証明書の文字を一字一句そのままトレースする」という意識の徹底が求められます。
自力作成vs司法書士への依頼|費用相場と向いている人の判断基準
相続関係説明図の作成を含め、登記手続き全体を自分で完結させるか、専門家にアウトソーシングするかの選択は、時間的コストと精神的ストレスのバランスで決まります。
司法書士に「相続関係説明図の作成のみ(戸籍収集含む)」を依頼した場合の費用相場はおよそ1万5,000円〜3万5,000円程度(戸籍取得実費別)です。登記申請までの一括代行を依頼する場合は、不動産の評価額や件数にもよりますが5万円〜12万円程度が標準的な報酬水準となっています。
【プロの結論】自力作成に向いている人・慎重になるべき人の判断基準
家系構造や家族間の関係性に基づき、自力で進めるべきかプロへ委任すべきかの明確な判定基準を提示します。
【自力作成に向いている条件】
- 被相続人の配偶者と実子のみで、相続人の総数が3人以下である
- 親族間に一切の不和がなく、遺産分割協議の合意が完全に形成されている
- 平日昼間に役所や法務局への問い合わせ・書類補正対応を行う時間的余裕がある
- 戸籍謄本の追跡(出生から死亡まで)が2〜3自治体程度で容易に揃う
【司法書士への依頼を強く推奨する条件】
- 前婚の子(異母・異父兄弟)や養子縁組、認知した子どもが存在する
- 代襲相続や数次相続が発生しており、戸籍の数が10通〜数十通に及ぶ
- 相続人の中に認知症の方や行方不明者、海外居住者が含まれている
- 兄弟姉妹や甥姪が相続人となるケース(集めるべき戸籍が膨大で遡航調査が極めて難解)
家族社会学の観点からも、相続は単なる事務作業にとどまらず、過去の家族関係の歪みや感情的なしこりが表面化しやすい局面です。中立的な専門家を介在させることは、親族間の不要な猜疑心を防ぎ、健全な心理的境界線(バウンダリー)を保ったまま円滑に財産承継を完了させるための安全装置としても機能します。

【相続関係説明図】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:相続関係説明図はパソコンではなく手書きでも法務局に受理されますか?
A1:問題なく受理されます。黒色のボールペンまたは万年筆を用い、楷書で丁寧に記載してください。鉛筆や消せるボールペン(フリクション等)は不可です。誤字脱字が生じた場合は、修正テープ等を使わず、最初から書き直すか、欄外に訂正印を押印して修正する必要があります。
Q2:法務局の公式エクセルテンプレートはどこで手に入りますか?
A2:法務局の公式ウェブサイト内「不動産登記の申請書様式について」のページに、登記申請書の様式とセットで「相続関係説明図」のエクセルファイルおよび記載例PDFが無料公開されています。一般的な一次相続用、数次相続用などパターン別に入手可能です。
Q3:相続放棄をした人がいる場合、説明図にはどのように記載すればよいですか?
A3:相続放棄をした人物も親族関係の事実として必ず記載します。その上で、氏名の下または右横に「(相続放棄)」と明記します。法務局への提出時には、家庭裁判所が発行した「相続放棄申述受理証明書」の原本の添付が別途必要になります。
Q4:相続関係説明図を提出すれば、印鑑証明書や遺産分割協議書の原本も還付されますか?
A4:相続関係説明図によって原本還付の対象となるのは「戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍・戸籍の附票・住民票」といった公的証明書束です。遺産分割協議書や印鑑証明書の原本還付を受けるためには、別途それらの書類のコピーを作成し「原本と相違ありません」と署名押印した原本還付請求用の写しを添えて提出する必要があります。
まとめ:手続きの負担を最小限に抑え確実に登記を完了させるために
相続関係説明図は、単なる家系図ではなく、法務局に対して正確な権利移転の根拠を提示し、貴重な戸籍原本を取り戻すための実務的な法的文書です。記載すべき基本項目(本籍、最後の住所、生年月日、死亡日、現住所、権利の帰属)を一つずつ戸籍情報と照合しながら作成すれば、シンプルな家族構成であれば自力で十分に完成させることができます。
相続登記の義務化に伴い、登記申請を放置するリスクは年々高まっています。まずは直近の役所で取得できる戸籍から収集を始め、家系の広がりを確認した上で、自力作成を進めるか専門家の手を借りるかを冷静に判断してください。正確な書類作成こそが、余分な費用を抑え、後々の相続トラブルを未然に防ぐ最短ルートとなります。 (出典: 相続 関係 説明 図(Yahoo!ニュース))